海底ケーブルが切れたらどうなる?日本のネットと迂回路

30秒でわかる答え

海底ケーブルが1本切れても、日本のインターネットが必ず丸ごと止まるとは限らず、別経路へ迂回して通信が続く場合があります。ただし、残った道が混んだり、複数本や重要設備が同時に損傷したりすると、影響が大きくなることがあります。

自分で切ってみる

海底ケーブルを1本切ってみる

海外へ向かう通信が、3本の道に分かれて進む模型です。道を切ると、残った道に通信がどう集まるかを確かめられます。

教材用の模型です。1本の道に通せる量を4、海外へ送りたい量を6としています。実際のケーブルの本数・容量・経路は、この図とは違います。

模型の早見表(数字は「使っている量 / 通せる量」)
状態道の使われ方どうなる?
どの道も切れていない
  • 道A:3 / 4
  • 道B:3 / 4
  • 道C(遠回り):0 / 4
  • 順番待ち:0
ふだんどおり届く
道Aが切れた
  • 道A:切れている
  • 道B:4 / 4
  • 道C(遠回り):2 / 4
  • 順番待ち:0
届くけれど、混みやすく遠回りになる
道Aと道Bが切れた
  • 道A:切れている
  • 道B:切れている
  • 道C(遠回り):4 / 4
  • 順番待ち:2
入りきらない分が、順番待ちになる

国内のサーバーだけで完結するサイトは、この海外への道を使いません。影響が出やすいのは、海外のサーバーとやり取りする通信です。

TERM PRIMER

先に知っておく言葉

海底ケーブル
国と国のインターネット通信を海の底でつなぐ大きなケーブルです。
インターネット
世界中のコンピューターやサーバーをつなぐ大きなネットワークです。
レイテンシ
データが届くまでなどにかかる遅延時間です。片道・往復など、測る区間を分けて考えます。
ストリーミング
動画や音楽を全部保存し終える前に、受け取りながら再生する方法です。

ラボの古いテレビに障害の速報が流れた日、ユイはノートを持つ手を止めました。海の底で線が切れる。その一言だけを聞くと、画面のむこう側が全部消えてしまう気がします。ここでは、そのイメージを一度ほどいて、何がどこまで影響するのかを順に確かめます。

複数経路で海の道を守る考え方は、第36話「海底ケーブルはどう守られている?」を先に読むと絵でつかめます。

海底ケーブルが1本切れたときの影響

日本には複数の国際海底ケーブルと陸揚げ地点があります。たとえばKDDIのFASTERは千葉県南房総市と三重県志摩市の2か所へ陸揚げし、災害時の冗長性を持たせています。海外とつながる道を一つに頼らない設計の実例です。海の道そのものの役割は、インターネット海底ケーブルとはで確認できます。

そのため、1本に障害が出ても、通信が行き場を失って消えるわけではありません。影響の出方は、どのケーブルか、どの地域か、どのサービスかによって変わります。

影響が出やすいのは、次のような通信です。

  • 海外にあるサーバーとやり取りするサービス
  • 海外の相手とつなぐオンライン会議や通話
  • 海外のゲームサーバーへつなぐ対戦
  • 海外の拠点にしかデータがない業務システム

一方、影響を受けにくい場合があるのは、次のような通信です。

  • 国内のサーバーだけで完結するWebサイト
  • 国内の配信拠点から届く動画のストリーミング
  • 家の中の機器同士のやり取り

ケーブルそのものの作りを先に見ておきたい場合は、海底ケーブルの仕組みで、陸揚げ局から海へ出るまでの流れを確認できます。

迂回路のたとえ:高速道路の通行止め

たとえでいうと、海底ケーブルの切断は高速道路の通行止めに近い出来事です。

いつも使う道が1本止まっても、別のインターチェンジから回れば、目的地には着きます。着けないわけではありません。ただし、回り道は距離が延びます。しかも、同じことを考えた車が同じ迂回路に集まるので、そこが混みます。

ただし実際には、道路のように運転手が地図を見て決めているわけではありません。ネットワークの機器が、届く道の情報をやり取りしながら、通れる経路へ通信を送り直しています。人が判断するより速く切り替わる場合もあれば、設定や事業者の設計によって時間がかかる場合もあります。

たとえは入口として便利ですが、車と違って通信は小さく分かれて進みます。同じ相手への通信が、途中で別々の道を通ることもあります。

海底ケーブル切断時に通信が迂回する仕組み

障害が起きてから、通信が別の道へ回るまでの流れを大づかみにすると、次のようになります。

  1. どこかの海域でケーブルに障害が起きる
  2. その経路を通れなくなったことが、ネットワーク側に伝わる
  3. 通れる別の経路が選び直される
  4. 通信は残っている道や、別の国を経由する道へ回る
  5. 残った道に通信が集中し、混み合うことがある
  6. 復旧するまで、その状態が続く場合がある

すべての通信が同じように回るとは限りません。契約している事業者、使っているサービス、相手のサーバーの場所によって、体感はかなり変わります。同じ家の中でも、動画は普通に見られるのに、海外のゲームだけ重い、ということが起こり得ます。

この「人によって症状が違う」ところが、障害を分かりにくくしています。隣の席の人が普通に使えていても、自分の環境だけ重いことがあります。逆もあります。どちらかが間違っているわけではなく、通っている道が違うだけです。

ユイは「全部止まるか、全部動くか、どっちかだと思ってました」とノートに書きました。実際には、その中間がずっと広く続いています。

ユイ

止まらないなら安心……でも、なぜ海外のサイトだけ重く感じるんでしょう

マコト

道が減ると、残った道に車が集まる。通れるけど、前より時間がかかるんだ

迂回先については、次の三つを分けます。

使える別経路運べる量の余裕起こりうること
ある十分にある通信を別経路へ回せる場合がある
ある足りない集中して遅延や混雑が増える場合がある
ない—その接続では通信できなくなる場合がある

経路図に別の線があるだけで、すぐに無影響で切り替わるとは限りません。また、近い場所を通る予備経路は、同じ災害で一緒に使えなくなる可能性があります。ITUの海底ケーブルの強靱性に関する解説でも、経路や接続の多様性が扱われています。

海外向けだけ遅い、が起きる理由

迂回した通信は、遠回りをします。日本から近い海域を通っていた道が使えなくなり、別の大陸を経由して届くようなことがあれば、行って帰る距離はその分だけ延びます。

この「行って帰る時間」は、レイテンシとして体感に出る場合があります。ページが開くまでの待ち、通話の声のずれ、ゲームの反応の遅れなどです。

さらに、混雑が重なります。減った道に同じ量の通信を通そうとすれば、順番待ちが起きます。時間帯によって重さが変わるのは、このためです。

見え方起きていそうなこと
国内サイトは普通、海外だけ重い海外へ出る経路が迂回・混雑している
海外サイトも普通に開ける使っている道が影響を受けていない
一部のサービスだけつながらないサービス側の設備や設定の問題の可能性
家の中の機器も反応が悪い家のWi-Fiや端末側の可能性

つまり、海外向けだけ重いなら経路の話、家の中まで重いなら別の話、と分けて見られます。

もう1つ知っておくと落ち着けるのが、切れる理由です。海底ケーブルの障害は、事件のようなものばかりではありません。船のいかりが引っかかる、漁具が当たる、海底で地滑りが起きる、地震で地形が動く。こうした出来事が、切断につながる場合があると言われています。

つまり、切断はネットワーク設計で備えるべき障害の一つです。だから複数経路や容量の余裕が用意されます。ただし、迂回路の有無と余裕は事業者・地域・相手先ごとに違い、単一障害なら常に無影響とは限りません。

復旧までに時間がかかるのはなぜか

迂回できるなら、すぐ直せばいい。そう思いたくなりますが、海の底の線はケーブルを差し替えるように直せません。

切れた場所を探し、専用の船が現場へ向かい、深いところから引き上げて結び直し、また沈める。この一連の作業には、天候や海域の条件も関わります。復旧まで数週間かかる場合があると言われるのは、そのためです。

作業の中身は海底ケーブルの修理はどうやる?で工程ごとに追えます。時間がかかる理由を知っておくと、「まだ直らないのか」ではなく「今どの段階だろう」と読めるようになります。

ニュースを落ち着いて確認するワーク

障害のニュースを見たとき、次の3点を書き出してみてください。スマホのメモで十分です。

  1. 自分が困っているのは何か — 海外サービスだけか、国内も含めてか
  2. 同じ環境の他の人はどうか — 家族や同僚も同じ症状か、自分だけか
  3. 使っているサービスの公式情報は何と言っているか — 障害情報が出ているか

書き出す例:

  • 困っているのは、海外のオンライン会議の音声が途切れること
  • 同じWi-Fiの家族は、国内の動画を普通に見られている
  • 会議サービスの公式情報には、まだ何も出ていない

この3点がそろうと、「経路の可能性が高そうだから、設定をいじらずに待つ」という判断ができます。原因を1つに決めつけず、家の中・サービス側・経路の3か所を分けて見るのが、いちばん静かな確認方法です。

ユイ

海底ケーブルが切れたってニュース、日本のネットが全部止まるってことですか?

マコト

心配になるよね。でも、海へ出ていく道は1本だけじゃないんだ

切断のリスクから進む記事

海の底の線が切れたと聞くと、世界がぷつりと途切れる絵が浮かびます。けれど画面のむこう側では、残った道が黙って通信を引き受けています。少し混んで、少し遅い。その「少し」の正体を知っていると、ニュースの見え方が変わります。

ミニクイズで切断の影響を確かめる

Q1. 海底ケーブルが1本切れると、日本のインターネットは止まりますか?

A. そうとは限りません。複数の経路があるため、別の道へ迂回して通信が続く場合があります。

Q2. 迂回できるのに、なぜ遅く感じることがあるのですか?

A. 遠回りで距離が延びること、残った道に通信が集中して混み合うことが重なるためです。

Q3. 障害のとき、影響が出やすいのはどんな通信ですか?

A. 海外のサーバーとやり取りする通信です。国内で完結するサイトや配信は、影響を受けにくい場合があります。

この記事について

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自分の言葉で説明してみよう

「海底ケーブルが切れたときに通信が迂回する流れと、影響が海外向けに出やすい理由を説明できるようになる。」を、いまの自分の言葉で一文にしてみてください。途中の説明でも大丈夫です。