仕組みを知る

物理量子ビットと論理量子ビットの違い

物理量子ビットは実機上の量子素子、論理量子ビットは複数の物理量子ビットと誤り訂正で守られた情報単位です。役割、誤り率、必要数、性能発表の読み方を比較します。

物理量子ビットと論理量子ビットの違い

30秒でわかる答え

物理量子ビットと論理量子ビットの違いは何ですか?

実機を構成する量子素子か、複数の素子と量子誤り訂正を使って守る情報単位か。 物理量子ビットは実機上の量子素子、論理量子ビットは複数の物理量子ビットと誤り訂正で守られた情報単位です。

一文定義
実機を構成する量子素子か、複数の素子と量子誤り訂正を使って守る情報単位か

TERM PRIMER

先に知っておく言葉

物理量子ビット
超伝導回路やイオンなど、量子コンピューターの実機で制御・測定するハードウェア上の量子ビットです。
論理量子ビット
複数の物理量子ビットと誤り訂正を使い、計算に必要な量子情報をより低い誤り率で扱う単位です。
量子誤り訂正
量子情報を複数の物理量子ビットへ符号化し、情報本体を直接読まずに誤りの手掛かりを調べる仕組みです。
オーバーヘッド
一つの論理量子ビットや計算を守るために追加で必要になる物理量子ビット、測定、時間、古典計算などの負担です。

イト

物理量子ビットが千個なら、論理量子ビットも千個使えるの?

ユイ

論理量子ビットは、たくさんの素子で一つを守ると聞いたよ

マコト

個数だけでなく、どの誤り率で何を実行できたか見ないと比べられないね

ピコ

量子計算工房の部品棚と保護区画を並べてみよう

物理量子ビットと論理量子ビットの違いは、実機を構成する量子素子か、複数の素子と量子誤り訂正を使って守る情報単位かにあります。物理量子ビットは制御・測定できるハードウェア上の単位、論理量子ビットは計算で使いたい量子情報を低い誤り率で扱うための抽象的な単位です。

「量子ビット数が多い装置ほど高性能か」を知りたいなら、二つの数を同じものとして比べないことが出発点です。素子数、品質、接続、符号、論理誤り率、実行した回路を分けて読みます。ピコルート・ラボでは、部品棚の枚数と、保護区画で実際に使える設計図の枚数を別々の計器で測ります。

多数の物理的な切符が一枚の論理的な切符を支える場面は、物語第103話「百枚で守る一枚」で確認できます。

物理と論理の違いを先に比較

観点物理量子ビット論理量子ビット
実体超伝導回路、イオン、原子などの量子素子複数素子の共同状態へ符号化した情報
主な役割状態準備、ゲート、測定を物理的に実行誤りを検出・訂正しながら計算情報を保持
誤り素子・操作ごとのノイズを直接受ける符号と訂正により物理誤りより低下を目指す
個数チップや装置に搭載された数守れる論理情報の数
評価ゲート・測定品質、接続、速度など論理誤り率、訂正巡回、論理演算など

部品札と設計図のたとえなら、物理量子ビットは一枚ずつの壊れやすい札です。論理量子ビットは、多数の札の関係、警報器、修復手順を使って一つの設計図を守ります。ただし実際の対応数は一定ではなく、符号や目標性能によって変わります。

物理量子ビットの役割と測り方

物理量子ビットは、量子状態を作り、ゲートで操作し、測定する装置上の最小単位です。方式によって超伝導回路、捕捉イオン、中性原子、光子など実装は異なります。量子ビットとは?で扱う抽象的な二準位の状態を、現実の物理系で実現します。

数を読む時は、次の性質も確認します。

  • 一量子ビット・二量子ビットゲートの誤り率
  • 測定と初期化の誤り率
  • 状態を保てる時間
  • 量子ビット同士の接続関係
  • ゲートと測定にかかる時間
  • 漏れ出しや相関した誤り
  • 同時に操作した時の性能低下
  • 長時間運転での校正変化

物理量子ビットが多くても、必要な相手と接続できない、操作の誤りが大きい、同時運転で性能が落ちると、実行できる回路は制約されます。

同じ方式の装置でも「搭載されている数」と「一つの実験で利用した数」が違う場合があります。予約可能な最大数、校正を通った数、回路へ割り当てた数を混ぜません。また一量子ビット操作の平均値だけでなく、計算で多用する二量子ビット操作や読み出しの分布を見ると、ボトルネックがどこにあるか分かります。

論理量子ビットを作る仕組み

論理量子ビットは、一つの物理素子に別名を付けたものではありません。量子符号に従って複数のデータ量子ビットへ情報を分散し、補助量子ビットでシンドロームを繰り返し測ります。

基本工程は次の通りです。

  1. 論理状態を物理量子ビット群へ符号化する
  2. 補助量子ビットを使って関係のずれを測る
  3. 古典デコーダーが誤り候補を推定する
  4. 補正または追跡記録を更新する
  5. 論理ゲートを、符号を壊さない方法で実行する
  6. 訂正巡回を続けながら計算を進める
  7. 最後に論理情報を読み出す

この中心工程は量子誤り訂正とは?で詳しく扱います。論理量子ビットの価値は数だけでなく、どれほど低い論理誤り率で、どの操作を、何回続けられるかにあります。

必要数が固定比率でない理由

「物理量子ビット100個で論理量子ビット1個」のような固定換算はできません。必要な数は、少なくとも次で変わります。

  1. 使う量子誤り訂正符号
  2. 物理ゲートと測定の誤り率
  3. 誤りの相関や漏れ出しの性質
  4. 素子同士の接続
  5. 目標とする論理誤り率
  6. 実行する回路の長さ
  7. 許容する計算全体の失敗確率
  8. 論理ゲートや状態準備に必要な補助領域
  9. 配線・制御・デコーダーの制約

物理誤り率が十分低ければ、符号の規模を大きくして論理誤り率を下げられる領域があります。一方、元の誤りが大きい、強く相関している、測定が遅いと、素子を増やすだけでは期待した改善になりません。

同じ点と使い分ける指標

両者は別世界の単位ではなく、論理量子ビットを物理量子ビットが支えます。そこで発表を読む時は、階層ごとに指標を分けます。

物理層で見るもの

  • 搭載・利用可能な物理量子ビット数
  • ゲート、測定、初期化の品質
  • 接続、速度、安定運転時間

論理層で見るもの

  • 符号化した論理量子ビット数
  • 物理誤り率と論理誤り率の比較
  • 訂正を何巡続けたか
  • どの論理ゲートやアルゴリズムを実行したか
  • 古典デコーダーを含む処理時間

物理層の改善は論理層の土台ですが、物理量子ビット数の増加がそのまま有用な計算能力の増加を意味しません。

性能発表を読む時の注意

「論理量子ビットを作った」という表現にも段階があります。短時間の状態保持、特定の誤り検出、複数巡回の訂正、論理ゲート、アルゴリズム実行では難しさが違います。

確認表を使います。

  1. どの符号を使ったか
  2. 何個の物理量子ビットで構成したか
  3. 物理と論理の誤り率を同条件で比較したか
  4. 訂正を何巡行ったか
  5. 測定誤りも扱ったか
  6. 論理ゲートを実行したか
  7. 結果を選別して捨てた試行はあるか
  8. リアルタイムでデコードしたか
  9. 有用な問題へどうつながるか

企業や方式が違えば、測定条件と目標も違います。一つの数字だけで順位を作らず、同じ条件へそろえられる範囲を確認します。

量子計算全体へ進むルート

量子コンピューターとは?へ戻ると、量子ビット、ゲート、干渉、測定、古典処理の全体図へ物理層と論理層を配置できます。論理量子ビットは古典計算機を不要にするものではなく、制御とデコードで協力します。

量子の重ね合わせとは?は、そもそも守ろうとしている量子状態の性質を読み直す入口です。この記事は二種類の量子ビットの比較を所有し、最新の搭載数・論理規模は未来観測所で条件付きの観測値として更新します。

指標を分ける確認クイズとワーク

ワーク: 架空の発表「2,000量子ビットの装置で4論理量子ビットを10万巡回保持」を、物理数、論理数、符号、誤り率、巡回数、論理操作の六欄に分けます。書かれていない値は「不明」とします。

Q1. 物理量子ビット数が多いほど論理量子ビットも多い?

同じ条件なら土台は増えますが、品質、符号、接続、目標誤り率によって換算が変わるため、数だけでは決まりません。

Q2. 論理量子ビットなら誤りはゼロ?

ゼロではありません。物理層より十分低い論理誤り率を目指し、計算全体の許容失敗率に合わせます。

Q3. 論理量子ビットを保持できれば耐故障計算は完成?

保持は一要素です。低誤りの論理ゲート、状態準備、読み出し、長い回路、古典制御を含めて評価します。

LAB WHITEBOARD

自分の言葉で説明してみよう

「実体、役割、誤り率、オーバーヘッド、性能指標の5軸で物理量子ビットと論理量子ビットを比較できるようになる。」を、いまの自分の言葉で一文にしてみてください。途中の説明でも大丈夫です。