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量子の重ね合わせとは?二つの状態が同時にあるとは

量子の重ね合わせを、確率振幅、位相、干渉、測定の関係から初心者向けに解説します。単に0か1か分からない古典的混合との違いも順に見ていきます。

量子の重ね合わせとは?二つの状態が同時にあるとは

30秒でわかる答え

量子の重ね合わせとは?

複数の基底状態に対応する複素確率振幅を持つ、一つの量子状態。 量子の重ね合わせを、確率振幅、位相、干渉、測定の関係から初心者向けに解説します。 単に0か1か分からない古典的混合との違いも順に見ていきます。

一文定義
複数の基底状態に対応する複素確率振幅を持つ、一つの量子状態

TERM PRIMER

先に知っておく言葉

重ね合わせ
複数の基底状態を、それぞれの確率振幅を付けて一つの量子状態として組み合わせた記述です。
確率振幅
量子状態の各候補に付く複素数です。絶対値の二乗が、対応する測定結果の確率になります。
位相
波や確率振幅の周期の中での位置関係を表す量で、量子の干渉結果に影響します。
古典的混合
複数の状態のどれかに確率的に決まっているが、どれかを知らないという統計的な混ざり方です。

量子の重ね合わせとは、複数の基底状態に対応する複素確率振幅を持つ、一つの量子状態です。「実はどちらか一方に決まっているが、私たちが知らない」という古典的な情報不足とは区別します。

測定すると一回につき一つの結果しか記録されないため、重ね合わせをそのまま目で見ることはできません。違いを確かめる鍵は、振幅の大きさだけでなく位相を操作し、干渉を起こせることです。ラボの量子駅にある二つのホームと、古典工房の袋を比べて順に見ていきます。

重ね合わせとは何かを一言で

式へ進む前に、ここで使う四つの言葉を短く決めます。

  • 基底状態: 測定結果を表す基準として選んだ状態です。量子ビットでは、計算基底の |0⟩ と |1⟩ が代表例です。
  • 純粋状態: 古典的な確率で複数状態を混ぜたものではなく、一つの状態ベクトルで表せる量子状態です。
  • 複素数: 実数部と虚数部を持つ数です。確率振幅では、大きさだけでなく位相に対応する向きも表します。
  • 確率振幅: 測定確率を計算する前の係数です。絶対値の二乗が確率になり、複素数なので干渉に必要な位相も持てます。

二つの基底状態を |0⟩ と |1⟩ とすると、一量子ビットの純粋状態は概念的に α|0⟩ + β|1⟩ と書けます。α と β は確率そのものではなく複素数の確率振幅です。測定確率はそれぞれの大きさの二乗で、合計は1になります。

量子切符のたとえなら、一枚の切符に0番ホームと1番ホームへ向かう二本の振幅矢印が付いています。矢印には長さだけでなく向き、つまり相対的な位相があります。ただし実際の状態は線形代数のベクトルであり、紙の切符が物理的に二枚へ裂けているわけではありません。

「二つの状態が同時にある」という短い説明は入口にはなりますが、それだけでは古典的な確率と区別できません。何を基底として選んだか、位相を保っているか、後の操作で干渉できるかまで含めて重ね合わせです。

ここが量子切符のたとえの限界です。「同時に二か所にいる」とだけ捉えると、複素確率振幅の位相と、成分を再結合したときの干渉を説明できません。

古典的な「どちらか不明」との差

箱の中に表か裏のコインを入れ、ふたを閉じた状況を考えます。見る前の確率が半々でも、コイン自体は古典的には表か裏のどちらかです。これは「どちらかを知らない」という古典的混合です。

一方、量子の純粋な重ね合わせでは、二つの成分の間に位相関係があります。標準の測定だけをすると、古典的混合と同じ50対50の統計になる場合もあります。それでも測定前に適切な操作を加えると、位相によって結果分布が変わります。

比べる点古典的混合量子的重ね合わせ
状態の説明どれかは決まっているが不明複数成分の振幅を持つ一状態
数の種類非負の確率複素確率振幅
位相関係持たない相対位相を持てる
干渉起こさない成分を再結合すると起こせる
一回の測定一結果一結果

同じ測定統計だけで状態を断定せず、別の測定基底や干渉操作も使って調べます。

振幅と位相が使われる場面

|+⟩ と |−⟩ という二状態は、0と1を標準基底で測るとどちらも半々になります。しかし二成分の相対位相が異なります。適切なゲートで成分を再結合してから測ると、一方はある出口へ、もう一方は別の出口へ集められます。

ここが「確率50%ずつなら同じ状態」という理解の落とし穴です。

  • 振幅の大きさの二乗が測定確率になる
  • 全体へ共通して掛かる位相は観測結果を変えない
  • 成分どうしの相対位相は干渉結果を変えられる
  • 測定基底を変えると、同じ状態の別の側面を調べられる
  • 周囲との相互作用で位相関係が失われると干渉は弱くなる

IBM Quantum Learningの教材も、古典的な確率分布と重ね合わせの主要な差を位相コヒーレンスと干渉で説明しています。

干渉で違いが見える

二重スリット実験とは?では、二経路に対応する振幅を足し合わせ、強め合う場所と打ち消し合う場所が検出分布に現れました。重ね合わせの情報を役立てるには、成分を用意するだけでなく、位相を保って再結合する操作が要ります。

たとえば振幅を二本の経路に分けた後、同じ位相で戻せば一方の出口を強められます。片方の位相を反転して戻せば、強まる出口が入れ替わります。これは「二つの候補を保存して後で片方を表示した」だけでは説明できません。

ただし、干渉縞を一回の測定で丸ごと得るのではありません。同じ状態準備と操作を多数回繰り返し、単発結果の分布として確認します。

測定すると何が得られる?

重ね合わせを標準基底で測定すると、|0⟩ または |1⟩ に対応する一つの古典的結果を得ます。各結果の確率は振幅から計算します。一回の読み出しで α と β を二つとも取り出すことはできません。

測定結果を重ね合わせそのものと混同しないため、次の順序で考えます。

  1. 同じ量子状態を準備する
  2. 位相を保つ操作、または比較用の操作を加える
  3. どの基底で測るか決める
  4. 一回につき一結果を記録する
  5. 多数回の分布を比較する

量子力学とは?で見たように、状態、操作、測定、統計を一組にすると、測定前の状態と測定後の記録を分けられます。

袋と量子切符を図で比較

イト、ユイ、ピコが、最初からどちらか一枚の札が入る古典的混合の袋と、二本の振幅矢印と相対位相を持ち干渉器で出口が変わる量子状態を比較している
同じ50対50の測定結果でも、位相を保った振幅を再結合できるかで、古典的混合と重ね合わせを区別できます。

図の左は、青か琥珀の札のどちらかを入れてから袋を閉じる古典工房です。右は、二成分の振幅と位相を保って干渉器に戻す量子駅です。結果の割合だけでなく、途中でどんな操作が可能かを比較します。

この図も量子状態の実体をそのまま写したものではありません。振幅矢印は複素数を見やすくした表現で、測定装置や対象によって使う基底は変わります。

イト

重ね合わせって、0と1の札を二枚とも隠し持っていること?

ユイ

同じ確率に見えても、あとで干渉できるかどうかが違うみたい

ピコ

量子駅の二つのホームで、確率と振幅を分けて確かめよう

重ね合わせのクイズとワーク

ワーク: 「表か裏か不明なコイン」と「|+⟩ 状態」を、準備、位相、再結合、標準測定の四行で比較します。標準測定の割合が同じでも、干渉操作後の結果が違うことを書き加えます。

Q1. 測定前から0か1のどちらかに決まっているだけ?

単なる情報不足と同じではありません。位相を保った成分を操作し、干渉として差を確かめられます。

Q2. 重ね合わせなら0と1を同時に読める?

いいえ。一回の標準測定で得るのは0または1です。状態について調べるには、同じ準備を繰り返し、複数の測定設定で統計を集めます。

Q3. 50対50なら状態は一種類?

違います。標準測定の確率が同じでも、相対位相の違う状態があります。別基底での測定や干渉操作が差を表します。

観測のルートへ進む

重ね合わせを測る時、人の意識ではなく装置との相互作用が何を記録するのかは量子の観測とは?で順に見ていきます。二基底の状態を情報単位として使う形は量子ビットとは?へ進みます。

重ね合わせを「二つに分身する」と覚えるのではなく、基底成分、複素振幅、相対位相、干渉、単発測定という順に読むことが大切です。この順序なら、古典的混合との境界を保ったまま次の量子現象へ進めます。

重ね合わせは、古典的なくじ引きとは違う

量子の重ね合わせは、複数の基底状態に確率振幅と相対位相を持つ状態です。単に「どちらか決まっているが知らない」という古典的混合とは異なり、位相によって干渉結果が変わります。測定で得る一つの結果と、測定前の状態を分けて考えるのが要点です。

量子ビット操作との接点

重ね合わせと量子ビットの振幅・相対位相を詳しく読むでは、Bloch球と量子ゲートを使い、同じ測定確率でも位相が違えば干渉結果が変わることを確かめます。

LAB WHITEBOARD

自分の言葉で説明してみよう

「重ね合わせ、古典的混合、測定結果、干渉の関係を分けて説明できるようになる。」を、いまの自分の言葉で一文にしてみてください。途中の説明でも大丈夫です。