TERM PRIMER
先に知っておく言葉
家の3か所で比べてみる
家の中の3か所で、つながり方を記録してみてください。スマホのアンテナ本数でも、速度測定の数字でも構いません。同じアプリ、同じ時間帯でそろえるのがコツです。
- 場所A:ルーターと同じ部屋 → アンテナ_本 / __Mbps
- 場所B:ドアや壁を1枚はさんだ部屋 → アンテナ_本 / __Mbps
- 場所C:2階や、いちばん遠い部屋 → アンテナ_本 / __Mbps
3つ並べると、どこで急に落ちるかが見えます。落ちた場所の手前に、たいてい壁か床か距離があります。
注意したいのは、一度に何か所も変えないことです。位置も帯域も設定も同時に変えると、何が効いたのかわからなくなり、悪くなったときに戻せません。1つ変えて、同じ場所で測る。これを繰り返します。
電波は上にも届く
電波が「上へ行かない」わけではありません。三次元に広がりますが、どの方向へも同じ強さで届く完全な球ではありません。ルーターのアンテナ特性、置き方、壁や床からの反射によって方向ごとの差が出ます。
イト
ねえピコ、電波って上には行かないの? 2階のWi-Fiだけ弱いんだけど
ピコ
上にも行くよ。ただ、行った先まで元気なままとは限らないんだ
ラボでイトが引っかかったのは、まさにこの点でした。電波の広がり方を整理すると、なぜ部屋によって差が出るのかが見えてきます。
第22話「Wi-Fiはどう空中を通る?」では、端末とルーターの間に見えない橋ができる様子を追えます。物語の橋を、家の各部屋で強さが変わる電波へ戻して考えます。
2階でWi-Fiが弱くなる仕組み
電波は、ルーターから一方向のビームとして飛んでいるわけではありません。
入口のイメージとしては、水面に落とした一滴の波紋を立体にしたものです。ただし実際の電波は、アンテナの放射パターンや反射の影響を受けるため、きれいな球にはなりません。このたとえは「距離とともに一地点で受ける強さが下がる」ことだけに使います。
このとき、2つのことが同時に起きます。
- 広がるほど、同じ量のエネルギーが広い面に散らばり、1か所あたりは薄くなる
- 途中に物があると、通り抜けるときにさらに減る
2階は、この両方を受けます。ルーターから遠く、しかも間に床が1枚入っています。だから同じ家の中でも、リビングと2階の奥の部屋では、届く強さがまったく違う場合があります。
Wi-Fiが家の中の無線区間である、という前提はWi-Fiの仕組みで整理しています。ここでは、その区間の中で何が起きているかを見ていきます。
ルーターと同じ部屋

まずはルーターと同じ部屋で確かめます。ほかの場所と比べる基準になります。
壁をはさんだ部屋

壁をはさむと、距離に加えて壁の材質や厚さも届き方に関わります。
2階の部屋

2階では、距離と間にある床の影響を受けます。電波が上へ進めないわけではありません。
置き場所を変えて比べる

使う場所を固定し、ルーターの位置だけを変えて比べます。置き場所を変えれば必ず改善する、という図ではありません。
電波はどう広がって、どう弱るか
画面のむこう側で電波を見ると、ルーターから広がる光の球のように見えます。中心は明るく、外へ行くほど淡くなります。
淡くなるのは、消えているからではありません。散らばっているからです。同じ光を、近くの小さな面で受けるか、遠くの広い面の一部で受けるかの違いです。
もう1つ大事なのは、Wi-Fiが一方通行ではないことです。
- 端末からルーターへ、データを送る
- ルーターから端末へ、データを返す
- 両方向とも、届いたことの確認をやり取りする
つまり、遠い部屋では「ルーターの声が聞こえにくい」だけでなく、「端末の声もルーターに届きにくい」状態になります。端末とルーターでは送信出力やアンテナ性能が異なるため、片方向だけ強く見えても双方向の通信が安定するとは限りません。
壁ごしの声にたとえて考える
たとえでいうと、壁ごしの声です。
隣の部屋から名前を呼ばれたとします。ドアが開いていれば、ふつうに聞こえます。ドアが閉まっていると、こもって聞こえます。壁が厚ければ、声がしているのはわかっても、何を言っているかはわかりません。距離が遠ければ、そもそも気づきません。
面白いのは、声が「聞こえない」のではなく「聞き取れない」ことです。何度も聞き返し、相手も言い直す。会話は成立しますが、遅くなります。
ただし実際のWi-Fiでも、これに近いことが起きています。電波が弱いと、届いたデータを確かめきれず、送り直しが増えます。端末は、確実に届く代わりに遅い送り方へ切り替える場合があります。「切れてはいないのに遅い」という部屋があるのは、そのためです。
ピコ
この壁、電波にとっては厚いカーテンみたいなものだね
イト
じゃあドアを開けとくと少しマシになる? 声と同じってことか
電波が何を苦手にしているか
通り抜けにくさは、素材によって変わります。あくまで目安ですが、傾向としては次のように整理できます。
| 間にあるもの | 電波への影響の傾向 |
|---|---|
| 木のドア、石膏ボードの壁 | 比較的通りやすい |
| コンクリートの壁や床 | 通りにくくなることが多い |
| 金属(冷蔵庫、金属棚、一部の断熱材) | 通りにくく、反射することもある |
| 水を多く含むもの(水槽、人の体) | 弱まる要因になる場合がある |
| 鏡や、金属膜のある窓 | 反射して届き方が変わる場合がある |
家の造りによって差が大きいので、「木造だから大丈夫」「鉄筋だからだめ」と決めつけない方が実態に合います。同じ鉄筋の建物でも、間取りとルーターの位置で結果は変わります。
ラボのルーターも、本棚の裏に置いていた時期は奥の机で弱く、棚の上に出したら変わりました。1つ動かして、1つ測る。それが確かめ方です。
周波数帯で届き方が変わる話
Wi-Fiには、使う電波の帯域が複数あります。同じルーターから、性格の違う電波が出ている場合があります。
- 2.4GHz:遠くや壁のむこうへ比較的届きやすい。ただし混みやすい
- 5GHz:速さを出しやすい。ただし距離や障害物の影響を受けやすい
2階の奥のような場所では、5GHzは届いても弱く、2.4GHzの方が安定する場合があります。逆に、ルーターと同じ部屋なら5GHzの方が快適なことが多くなります。どちらが上、という話ではありません。詳しくはWi-Fiの2.4GHzと5GHzはどっち?で、得意と苦手を並べて比べています。
置き場所で変わる余地と注意点
置き場所で改善する余地は、たしかにあります。ただし、どの家でも同じ結果になるとは言えません。試して、測って、決めることになります。
試す価値があるのは、次のような変更です。
- 床に直置きせず、少し高い位置に置く
- 金属の棚や家電の裏から出す
- 家の端ではなく、使う部屋に近い側へ寄せる
- ルーターの周りに物を積まない
そして、置き場所だけでは届かない家もあります。その場合は、中継機やメッシュのように、電波を出す場所そのものを増やす選択肢があります。ここでは詳しく踏み込みませんが、「配置を工夫する」の次に「電波の出発点を増やす」という段があると知っておくと、判断が早くなります。
よくある疑問
Q1. Wi-Fiの電波は上には届かないのですか?
A. 届きます。ルーターを中心に球のように広がります。ただし距離と、間にある床や壁で弱まります。
Q2. 同じ家なのに部屋で差が出るのはなぜですか?
A. 距離が違い、間にある物の材質と枚数が違うためです。木のドアとコンクリートの床では、通りにくさが変わります。
Q3. 電波が弱いと、なぜ切れずに遅くなるのですか?
A. 送り直しが増えたり、確実に届く代わりに遅い送り方へ切り替わったりする場合があるためです。
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自分の言葉で説明してみよう
「Wi-Fiの電波が距離と障害物で弱まる理由を理解し、部屋によって強さが変わることを説明できるようになる。」を、いまの自分の言葉で一文にしてみてください。途中の説明でも大丈夫です。




