TERM PRIMER
先に知っておく言葉
Wi-Fiの2.4GHzと5GHzの違いを一言でいうと、2.4GHzは遠くや壁のむこうに届きやすいかわりに混みやすく、5GHzは速さを出しやすいかわりに距離と障害物に弱いという関係です。
どちらが優れている、という話ではありません。届く範囲と速さを交換しているだけです。だから、ルーターの隣ならイトの言い分が正しく、離れた部屋ならユイの言い分が正しくなります。
ラボでもこの議論は決着しませんでした。条件をそろえて確かめない限り、どちらも正しいままだからです。まずは、それぞれの性格を順に見ていきます。
Wi-Fiの電波を「見えない橋」として先に場面でつかみたい場合は、第22話「Wi-Fiはどう空中を通る? 見えない橋の部屋へ」から読むこともできます。この記事では、その橋に使う2種類の周波数を比べます。
2.4GHzと5GHzの違いを一言で
GHz(ギガヘルツ)は、電波が1秒間に何回振動するかを表す単位です。数字が大きいほど、細かく速く振動しています。
ここで混ざりやすいのが、「振動が速い」と「通信が速い」は同じ意味ではない、という点です。細かく振動する電波は、多くの情報を乗せやすい性質があります。その一方で、物にぶつかったときに弱まりやすい性質もあります。
つまり数字は、優劣の順位ではなく性格を表しています。5GHzは、速く走れるかわりに息が続かない。2.4GHzは、速くはないが遠くまで歩ける。そういう分かれ方です。
イト
5GHzのほうが数字が大きいじゃん。だったら速いに決まってるでしょ
ユイ
でも私の部屋、5GHzだと切れるんです。2.4GHzのほうが安定していて
低い声と高い声にたとえると
たとえでいうと、声の高さです。
隣の部屋から誰かが話しているとき、壁ごしに届きやすいのは低い音です。何を言っているかはわからなくても、話し声があること、その低い響きは伝わります。反対に、高い声は同じ部屋にいるとくっきり聞こえますが、壁を1枚はさむと急に届きにくくなります。
このたとえで対応させているのは、周波数によって壁越しの届き方が変わる点だけです。高い声そのものに情報が多いわけではなく、Wi-Fiの通信速度も周波数の数字だけでは決まりません。
現実のWi-Fiに戻すと、2.4GHzは障害物のむこうへ比較的届きやすく、5GHzは近距離で広い帯域幅を使える規格が多いため速度を出しやすい、という違いです。声のたとえは届き方を思い出す入口に限り、速度や通信容量の根拠には使いません。たとえはここまでで、ここから先は自分の家の条件で見ます。
得意と苦手を並べて比較する
性格を並べると、選ぶときに迷いにくくなります。見る点は三つに絞れます。ルーターからの距離、間にある壁や床、そして同じ帯域を使う機器の数です。表はこの順に並べています。
| 見る点 | 2.4GHz | 5GHz |
|---|---|---|
| 届く距離 | 比較的遠くまで届きやすい | 近い範囲で力を出しやすい |
| 壁や床 | 通り抜けやすい傾向 | 弱まりやすい傾向 |
| 速さの上限 | 5GHzより控えめなことが多い | 出しやすいことが多い |
| 混みやすさ | 混みやすい | 比較的すいていることが多い |
| 使う機器 | 古い機器や家電も使う | 対応した機器のみ |
2.4GHzが混みやすいのには理由があります。この帯域は、Wi-Fi以外の機器も使っているためです。電子レンジ、一部のワイヤレス機器、近所のWi-Fiなど、同じ空間に声を出すものが多い。混んだカフェで低い声を張り上げているような状態になる場合があります。
一方で5GHzは、比較的すいています。ただし、すいた道でも遠ければ届きません。すいていることと、届くことは別です。
だから迷ったら、距離と壁を先に見ます。混みやすさは、同じ場所で両方を試したあとに考える順番で足ります。
共通しているのは、その先の回線
ここは押さえておきたいところです。
2.4GHzと5GHzは、どちらもWi-Fiです。どちらも、端末と家のルーターをつなぐ家の中の無線区間にすぎません。その先、ルーターから回線を通って外のインターネットへ出る道は、まったく同じものを使います。
- どちらの帯域でも、つながる先は同じルーター
- どちらの帯域でも、その先の回線契約は同じ
- どちらの帯域でも、相手側のサービスが混んでいれば影響を受ける
- 帯域を変えても、契約の上限より速くはならない
だから、回線側や相手側が原因で遅いときに帯域を切り替えても、体感は変わらない場合があります。家の中の区間と外の区間が別物である、という整理はWi-Fiの仕組みで扱っています。帯域の話は、そのうち「家の中の区間」の中の選択肢です。
ユイ
どっちが上、じゃなくて、届く距離と速さを交換しているんですね
イト
ぼくの部屋はルーターの隣だから5GHzでいいのか。勝ち負けじゃないんだ
使い分けが効く場面と干渉の話
場面で選ぶと、判断が簡単になります。
- ルーターと同じ部屋、または1枚のドア程度:5GHzが快適なことが多い
- 2階や、壁を何枚もはさんだ部屋:2.4GHzのほうが安定する場合がある
- 動画やオンライン会議を近くで使う:5GHzを試す
- 家の隅に置く古い機器や家電:2.4GHzしか使えないことがある
- 電子レンジを使うと途切れる:その時間帯だけ5GHzへ寄せる
5番は、実際に体験すると納得が早い例です。電子レンジは2.4GHzに近い電波を使う機器で、動作中に同じ帯域のWi-Fiが不安定になる場合があります。温めている3分だけ動画がカクつくなら、干渉を疑う手がかりになります。
なお、ルーターによっては2つの帯域を1つのSSIDにまとめ、状況に応じて自動で振り分ける機能を持つものがあります。便利ですが、切り替えの判断は機器に任せることになります。どちらへつながっているかを自分で確かめたいときは、SSIDを分ける設定を選べる場合があります。
「5GHzなら速い」という誤解
イトの言い分が崩れるのは、ここです。
5GHzに変えれば速くなる、とは言い切れません。次のような場面では、5GHzに変えても改善しないか、むしろ悪化することがあります。
- ルーターから遠く、5GHzの電波が弱く届いている
- 間にコンクリートの床や壁がある
- 端末が5GHzに対応していない
- そもそも遅さの原因が、回線側や相手側にある
もう1つの誤解は、「アンテナ本数が多い=速い」です。本数は電波の強さの目安であって、実際に出る速さとは別の話です。強くても混んでいれば遅くなり、少し弱くてもすいていれば快適な場合があります。
離れた部屋で弱いときの見方はWi-Fiが2階や離れた部屋で弱いのはなぜにまとめています。帯域の切り替えは、距離と壁の問題を解決する手段ではなく、同じ条件の中で相性のよい方を選ぶ手段です。
SSIDを確かめるワークとクイズ
スマホでWi-Fiの設定画面を開き、家のSSID一覧を見てください。ルーターの機種によっては、名前の末尾に「-A」「-G」「-2G」「-5G」などが付いています。
- 見えたSSIDの名前を書き出す:______
- 今つないでいるのはどちらか:2.4GHz / 5GHz / わからない
- ルーターと同じ部屋で速度を測る:__Mbps
- いちばん遠い部屋で、同じ帯域で測る:__Mbps
- 遠い部屋で、もう一方の帯域に変えて測る:__Mbps
三つの数字が並んだら、読み方はこうです。遠い部屋で2.4GHzの数字が5GHzより大きければ、その部屋は2.4GHzが合っています。同じ部屋で5GHzのほうが大きければ、ルーターの近くは5GHzで足ります。三つがほとんど同じなら、家の中の帯域ではなく、その先の回線や相手側を疑います。
画面のむこう側の道は同じでも、家の中のどの声で話すかで、入口の広さが変わります。
Q1. 5GHzのほうが数字が大きいので、常に速いですか?
A. 言い切れません。近くでは速さを出しやすい一方、距離や壁で弱まりやすいため、離れた部屋では2.4GHzのほうが安定する場合があります。
Q2. 2.4GHzが混みやすいのはなぜですか?
A. Wi-Fi以外の機器や近所のWi-Fiも同じ帯域を使っていることがあり、同じ空間に声を出すものが多くなるためです。
Q3. 帯域を変えれば、契約より速くなりますか?
A. なりません。どちらの帯域も家の中の区間で、その先の回線は同じものを使います。
周波数の選び方から進む記事
帯域の性格が見えたら、電波そのものの届き方と、新しい規格の話へつなげると選びやすくなります。
- Wi-Fi 6とは:混雑への対応が何を変えたのかを見ます。
- Wi-Fiの仕組み:家の中の無線区間の位置づけを確かめます。
- Wi-Fiが2階や離れた部屋で弱いのはなぜ:距離と壁の影響を測ります。
- アクセスポイントとは:電波を出す側の役割を押さえます。
イトとユイの議論は、どちらも正しかったのです。ただ、立っていた場所が違いました。数字の大小ではなく、自分がルーターからどれだけ離れているか。そこから選ぶと、答えが出ます。
部屋へ持ち帰る選び方
書き写すなら、2.4GHzと5GHzは数字の大小で勝敗を決めず、距離、壁、混雑に合わせて選ぶです。
ルーターの場所と、よく使う部屋を間取りに丸で付けてください。自分の立ち位置を見つけたとき、イトとユイの二つの答えをどちらも使えるようになります。
LAB WHITEBOARD
自分の言葉で説明してみよう
「2.4GHzと5GHzが距離と速さを交換した関係にあることを理解し、場面に応じて選べるようになる。」を、いまの自分の言葉で一文にしてみてください。途中の説明でも大丈夫です。




