TERM PRIMER
先に知っておく言葉
オンラインゲームのラグは、相手との距離・家の中の環境・回線の混雑・ゲームのサーバー側という4つの原因が、混ざって起きています。犯人が一人だけいるわけではありません。
さらに、ラグと呼ばれている現象そのものが一つではありません。カクつく、一瞬飛ぶ、全体が重い、自分だけ遅い。どれも同じ言葉で呼ばれますが、疑う場所は別々です。まず症状を分けて確認し、近いところから順に見ていきます。
往復の遅れを時計として先に体感したい場合は、第29話「レイテンシって何が遅れているの? 往復時計を見よう」から入れます。この記事では、その遅れがゲーム画面へ出る原因を4か所に分けます。
ラグがなぜ起きるかを一言でいうと
ラグとは、自分の操作が相手に届き、相手の状況が自分に戻ってくるまでの「ずれ」が、見えるかたちで表に出た状態です。
通信には、どうしても時間がかかります。その遅れそのものをレイテンシと呼びます。遅れがごく小さくて安定していれば、人はラグとして感じません。遅れが大きくなったり、一定せずに揺れたりしたときに、画面が引っかかったように見えます。
つまりラグは、ゼロにする対象というより、小さく安定させる対象です。この見方に立つと、「回線を変えれば全部直る」という発想からいったん離れられます。
もう一つ知っておきたいのは、対戦ゲームの多くが、遅れをある程度見越して作られていることです。少し先の動きを予測して表示したり、届いた情報に合わせて位置を静かに直したりします。相手が急にワープして見えるのは、その修正が表に出た瞬間である場合もあります。壊れているのではなく、つじつまを合わせにいっている状態です。
イト
今の負けたの、ラグのせいだよ!ぼくは何も悪くないもん!
マコト
うん、それもありえるね。じゃあ今のラグがどれだったのか、一緒に見てみようか
伝言ゲームで見るラグの正体
たとえでいうと、オンライン対戦は少し遅れた伝言ゲームに似ています。
あなたが「今だ」と思ってボタンを押す。その操作は言葉になって、隣へ、また隣へと渡っていきます。相手のところに着くころには、少し時間が経っています。相手の返事も、同じだけ時間をかけて戻ってきます。往復しているあいだに、盤面は動き続けています。
ただし実際に渡されているのは、人の声ではなくパケットと呼ばれる小さなデータです。操作や位置の情報が細かく分けられ、ルーターを通り、ゲームのサーバーに届き、そこから相手へ配られます。画面のむこう側では、この受け渡しが1秒に何十回も繰り返されています。
伝言の列が長ければ遅れます。誰かが聞き取れずに一言落とせば、話が飛びます。列そのものが混み合えば、全体が重くなります。落とし物のほうは パケットロスとは で扱っている現象で、遅れとは別の合図です。
原因1: 自分と相手の距離
一つ目は、距離そのものにかかる時間です。
サーバーが遠いほど、往復に時間がかかります。これは設定でどうにかする話ではなく、信号が進むのに時間がかかるという物理的な事情です。光ファイバーの中を進む信号も、無限に速いわけではありません。地球の反対側にあるサーバーとやり取りすれば、往復の遅れは避けられない幅で残ります。
だからこそ、サーバー地域を選べるゲームでは、近い地域を選ぶと体感が変わる場合があります。反対に、遠い地域のサーバーに入っているときは、家の機器をいくら見直しても、この分の遅れは縮みません。
距離の目安を数字で見たいときは、往復時間を測る pingとは が入口になります。
なお、距離はまっすぐの直線距離とは限りません。データは道路のように敷かれた経路をたどるため、地図の上では近くても、通る道が遠回りになっている場合があります。同じ国内のサーバーでも数字に差が出るのは、こうした事情が混ざるためです。
原因2: 家の中の電波と同時利用
二つ目は、家の中です。
ここは、いちばん自分で動かせる場所でもあります。Wi-Fiは電波で届いているため、距離や壁、家具、他の電波の影響を受けます。電波が弱いと、届かなかったデータを送り直すことがあり、そのぶん遅れや揺れが増えます。
- ルーターから遠い部屋、または壁を何枚もはさむ位置で遊んでいる
- 同じ時間に家族が動画やストリーミングを大きく使っている
- 端末やルーターが長く動き続けていて、処理が重くなっている
- 近所の無線と電波の通り道が混み合っている
家の中が原因のときは、症状が「部屋を変えると変わる」「時間を変えると変わる」という形で出やすくなります。
イト
じゃあ、ぼくが撃った瞬間って、相手の画面ではもう終わってたってこと?
マコト
そういうことが起きる場合はあるね。だから、遅れと飛びは分けて見るんだ
原因3: 回線の混雑と時間帯
三つ目は、家の外に出たあとの道の混み具合です。
夕方から夜にかけて、多くの人が同時にネットを使います。集合住宅では、建物の中で通信を分け合う作りになっている場合もあります。道が混めば、荷物の到着はばらつきます。速度の数字が悪くなくても、遅れが揺れることがあります。
混雑が原因のときは、「昼は快適なのに夜だけ崩れる」といった時間帯の差が手がかりになります。ラボの古いルーターで試したときも、同じ部屋・同じ設定なのに、夜だけ数字が伸びる日がありました。
原因4: ゲームのサーバー側と相手側
四つ目は、自分の外側です。
ゲームのサーバーが混んでいる、メンテナンス前後で不安定になっている、あるいは対戦相手の回線が悪い。こうした場合、自分の環境をどれだけ整えても、画面はカクつきます。相手がワープするように見えるとき、原因が相手側にあることもあります。
自分だけが体感しているのか、周りも同じなのか。ここを見分けると、無駄な機器の買い替えを避けられます。フレンドと一緒に遊んでいるなら、同じ場面で相手も引っかかったかを聞くのが、いちばん早い確認になります。全員に出ているなら、家の中を触っても変わりません。
サーバー側の不調は、時間が解決する場合もあります。人が集中する時間帯やアップデート直後は、しばらく様子を見るという選択も現実的です。
決めつけを避ける切り分けの順番
原因を一つに決めてしまうと、遠回りになります。まず、起きた症状を4つに仕分けます。
| 症状 | 画面での見え方 | 疑いやすい場所 |
|---|---|---|
| カクつく | 動きが小刻みに引っかかる | 家の中の電波、端末の処理 |
| 一瞬飛ぶ | 相手や自分がワープする | データの落とし物、無線の不安定さ |
| 全体が重い | ずっと反応が遅い | 距離、回線の混雑 |
| 自分だけ遅い | 周りは普通に動いている | 自分側の環境や機器 |
同じ「ラグい」でも、出ている合図は違います。右の列は、あくまで疑いやすい場所です。複数が同時に起きることもあります。
そのうえで、近い場所から順番に確認していきます。
- どの症状だったかをメモする(カクつく・飛ぶ・重い・自分だけ)
- 他のゲームや動画でも起きるかを見る
- ルーターの近くで、または有線で試して変わるかを見る
- 時間帯を変えて、同じ症状が出るかを比べる
- サーバー地域や、周りのプレイヤーの状況を確認する
ここで大切なのは、一回の体感で結論を出さないことです。一度の勝負で起きた引っかかりは、たまたまの可能性もあります。数字の見方は ゲームのpingが高い原因は? で細かく追えます。
この順番には理由があります。上のほうほど、お金がかからず、すぐ試せて、結果がはっきり出るからです。回線の契約を変えるのは、いちばん時間もお金もかかる手です。それを最初に選ぶと、原因が家の中や相手側だった場合に、何も変わらないまま費用だけが増えます。
ラグ仕分けワークとミニクイズ
直近で「ラグい」と感じた場面を一つ思い出し、次の一行を埋めてみてください。
あのラグは、____(カクつく/飛ぶ/重い/自分だけ)だった。だから最初に疑うのは____。
書き出した症状が「重い」なら距離や混雑、「飛ぶ」なら落とし物、「カクつく」なら電波や端末、「自分だけ」なら自分側の環境から見ていきます。3回分たまると、自分の家の癖が見えてきます。
Q1. ラグの原因は一つですか?
A. 一つとは限りません。距離、家の中の環境、回線の混雑、サーバー側などが混ざって起きます。
Q2. 遠いサーバーの遅れは、機器を替えれば消えますか?
A. 消えません。距離の分の往復時間は残るため、サーバー地域の選択が効く場合があります。
Q3. 「飛ぶ」と「重い」は同じ原因ですか?
A. 違うことがあります。飛ぶのはデータが届かない合図、重いのは遅れそのものの合図です。
ラグの原因から進む記事
症状を4つに分けられたら、次は数字と接続方法で確かめる番です。
- pingとは: 往復の時間を測る、いちばん基本の確認方法です。
- パケットロスとは: 「飛ぶ」の正体である落とし物を扱います。
- ゲームのpingが高い原因は?: 夜と部屋で数字が変わる理由を追います。
- ゲームの有線と無線はどっちがいい?: 家の中の環境を一段区別して考えます。
負けた直後は、原因を一つに決めたくなります。けれど画面のむこう側では、距離と電波と混雑とサーバーが同時に動いています。どれだったのかを分けて言えるようになると、次の一戦の前にできることが見えてきます。
ラグの犯人を、四つの場所に分ける
ラグは一人の犯人ではなく、相手までの距離、宅内のWi-Fiや機器、回線の混雑、ゲームサーバー側のどこでも起こりえます。まず有線またはルーター近くで同じゲームを試し、ほかの利用者の報告と比べると、自宅側か外側かを一段ずつ絞れます。
LAB WHITEBOARD
自分の言葉で説明してみよう
「ラグを距離・宅内環境・回線混雑・サーバー側の4つに分け、症状ごとに切り分けの順番を説明できるようになる。」を、いまの自分の言葉で一文にしてみてください。途中の説明でも大丈夫です。



