TERM PRIMER
先に知っておく言葉
ビデオ通話で自分だけ固まるときは、誰の映像が、誰の画面で止まっているかを確かめます。複数の相手が「あなたの映像だけ止まる」と言うなら、自分のカメラ、端末の処理、アプリ、上り(送信)の通信が確認候補です。相手の映像を受け取れていても、自分から送るまでの工程がうまく動いているとは限りません。
ラボでイトとユイの意見が割れたのも、ここでした。イトは「相手が悪い」と言い、ユイは「自分の家が悪い」と言う。どちらも半分ずつ合っています。このページでは、下りと上りを分けて考えることで、疑いの濃さを整理していきます。
映像と音声が双方向へ同時に流れる様子は、第79話「何を近づける? 同時に光る返事の道」で先に絵として確かめられます。
ビデオ通話で誰の映像が止まるかを確認する
まず、参加者からどう見えるかを分けます。これは原因を確定する表ではなく、次に調べる範囲を選ぶための表です。
| 起きていること | 最初に確認する範囲 |
|---|---|
| 複数の相手に、自分の映像だけ止まって見える | 自分のカメラ・端末・アプリ・送る側の通信 |
| 自分の画面で、ほかの参加者がまとめて止まる | 自分の受信や端末の処理。ほかの参加者にも同じか聞く |
| 一人の相手にだけ、自分の映像が悪く見える | その相手側の受信や表示も含めて比較する |
自分のカメラのプレビューも止まるなら、通信へ出る前の処理を確認します。ただし、小窓が滑らかでも相手へ送る映像と同じ工程とは限らず、端末の問題をすべて除外できるわけではありません。
キャッチボールでたとえる上りと下り
たとえでいうと、キャッチボールです。
相手が投げたボールを、あなたは楽々と受け取れます。グローブも大きいし、目もいい。受け取るのは得意です。ところが、投げ返すほうの肩が弱いと、ボールは相手の足元に転がります。相手は「今の、届いてないよ」と言うでしょう。
- 受け取る = 下り(ダウンロード)。相手の映像が届く方向
- 投げる = 上り(アップロード)。自分の映像が出ていく方向
キャッチボールが成立していないとき、下手なのは受ける側とは限りません。この場面で問われているのは、投げる力のほうです。
ただし実際には、通信は肩の力のように一つの数字ではありません。上りには、瞬間の速さだけでなく、揺らぎ(届く間隔のばらつき)や、途中で失われるパケットの量も効いてきます。リアルタイム通信とはで見たように、待ち合わせに間に合うことそのものが条件になるからです。
ビデオ通話で映像が届くまでの順番
自分の顔が相手に映るまでの順番を、並べます。
- カメラが映像を取り込む
- 端末が、送れるサイズに圧縮する
- Wi-Fiで、ルーターまで飛ばす
- 家の回線から外へ出ていく(ここが上り)
- 通話サービスの中継を通る
- 相手の家の回線へ入っていく(相手にとっては下り)
- 相手の端末が組み立てて映す
複数の相手に自分の映像だけが固まって見えるなら、まず1から5を確認します。一人にだけ悪く見える場合は、6と7も候補です。自分が相手の映像を受け取る道と、相手が自分の映像を受け取る道は別なので、一方向が正常でも逆方向まで正常とは判断できません。
動画視聴との大きな違いは、長くためにくいことです。録画動画なら数秒以上を先読みできますが、通話で同じだけ待てば会話そのものが遅れます。短いジッターバッファは使っても余裕が小さいため、上りの揺れが映像や音声へ出やすくなります。
家庭の回線は上りが細いことがある
ここが、多くの人がつまずくところです。
家庭向けの回線には、下りと上りの速度が同じではないものがあります。契約の種類や設備によっては、上りが下りよりかなり小さい場合があります。動画を見る、Webを見る、といった使い方では受け取るほうが圧倒的に多いため、そういう設計になっていることがあります。
- ふだんの使い方: ほとんどが下り。上りが細くても気づかない
- ビデオ通話: はじめて上りを本気で使う。ここで細さが顔を出す
- ファイルの送信や配信: 同じく上りを使う。夜に終わらない、が起きやすい
アップロード速度の目安で見るように、ビデオ通話に求められる上りは、数Mbps程度でも成立する場合があります。大きな数字ではありません。それでも足りなくなるのは、家族が同時に何かを送っていたり、電波が弱かったり、細さが重なったりするからです。
イト
じゃあ、相手のせいじゃなくて、投げるほうが弱かっただけ?
ユイ
たぶんね。でも決めつけないで、上りの数字を見てから言おうと思う
Wi-Fiの電波は送受信の両方に効く
もう一つ、見落としやすいところがあります。
Wi-Fiは、受け取る道と送る道が別々にあるわけではありません。同じ電波で、行きも帰りもやりとりしています。だから、電波が弱い場所では、下りも上りも一緒に落ちることがあります。
- ルーターから遠い部屋にいる
- 壁や扉をいくつもへだてている
- 電子レンジなど、電波が重なるものが近くにある
- 家族が同時に大きな通信をしている
「下りは測ると速いのに、通話だけ固まる」という場合、測ったのが一瞬の下りだったから、ということもあります。速度測定は短い時間の勝負ですが、通話は数十分続きます。続けているあいだに乱れる、というのは測定では見えにくいのです。
相手側やサービス側の可能性と誤解
自分の上りが濃い、と書いてきました。それでも、残しておく容疑者があります。
- 相手の端末が重くなっていて、こちらの映像を組み立てきれていない
- 通話サービス側で、混雑や不調が起きている
- 会議の人数が多く、端末の処理が追いつかない
- 自分の端末のカメラやアプリが重くなっている
誤解しやすいのは、「自分だけ固まる=自分の回線が悪い」と決めつけてしまうことです。人数が10人を超える会議で固まるのに、2人の通話ではなめらかなら、回線というより処理のほうが疑わしくなります。もう一つの誤解は、速度測定の数字が良ければ大丈夫、という読み方です。測定は瞬間、通話は継続。見ているものが違います。
ビデオ通話が固まるときに試す対処
軽いものから、1つずつ試します。
- カメラを切る: 音声だけにする。それでなめらかになるなら、映像を送る分の上りが重かった可能性があります
- 人数を減らす、または退出して入り直す: 端末の処理か、その通話の状態かを分けられます
- ルーターの近くへ移る: 電波が効いていたなら、ここで変わります
- 有線でつなぐ: つなげる機器があるなら、Wi-Fiを容疑者から外せます
- 家の中の同時通信を止める: クラウド同期、写真・動画の送信、バックアップを先に止め、必要ならほかの大容量通信も止めます
- 別のサービスで通話してみる: それでも固まるなら、サービス側は薄くなります
1回に1つだけ変えるのが基本です。カメラを切りながら部屋を移動すると、直っても理由がわかりません。地味ですが、これが確認のいちばん短い道です。
イト
ユイのビデオ通話、また固まってる。相手のせいじゃないの
ユイ
でも相手の画面はなめらかなの。固まるって言われるのは、いつも私だけ
上りの通信から進む記事
「相手が悪い」でも「自分が悪い」でもなく、「送るほうが細い」。言葉が一つ変わるだけで、次に測る場所が決まります。
- アップロード速度の目安: 通話にどれくらいの上りがいるのかを確かめます。
- リアルタイム通信とは: ためられない通信の条件を知ります。
- 通信速度の単位Mbps: 測った2つの数字が何を表すのかを確かめます。
- Wi-Fiの仕組み: 行きも帰りも通る、あの数メートルを見に行きます。
画面のむこう側では、あなたの顔がストリーミングとして相手へ出ていきます。受け取る道ばかり見ていると、その出口の細さには、なかなか気づけません。
動画トラブル全体の切り分けは動画が止まるのはなぜ?へ戻り、そこに「通話では上りも同時に使う」と一行足してから、次の通話で送受信を分けて観察してください。
上りを測るワークと確認クイズ
速度測定を開いてください。たいてい、下りと上りの2つの数字が出ます。ふだん見るのは大きいほうの数字ですが、今日は小さいほうだけを見ます。
- 下り(Mbps)を書く
- 上り(Mbps)を書く
- 使う通話サービスの公式目安と、測った上りを並べる
- 同じことを、ルーターのそばと、いつも通話する場所で3回ずつ
上りと下りの比率だけで合否は決めません。通話する場所で上りが繰り返し落ちる、値が大きく揺れる、カメラを切ると改善する、といった症状との組み合わせを見ます。ルーターのそばで安定するならWi-Fi側、有線でも公式目安へ届かないなら回線や契約側を次の候補にできます。
Q1. 自分の映像だけ固まると言われたら、どこが疑わしいですか?
A. 自分の上り(送信)側です。相手の映像が見えているなら、下りは足りている可能性が高いためです。
Q2. 家庭の回線で、上りが細いことがあるのはなぜですか?
A. ふだんの使い方は受け取る通信が中心のため、契約や設備によっては上りが下りより小さい場合があるからです。
Q3. カメラを切ってなめらかになったら、何がわかりますか?
A. 映像を送るぶんの上りが、その環境では重かった可能性があるとわかります。
LAB WHITEBOARD
自分の言葉で説明してみよう
「ビデオ通話で自分の映像だけ固まるときに、上り(送信)の通信が疑わしくなる理由と、その確かめ方を説明できるようになる。」を、いまの自分の言葉で一文にしてみてください。途中の説明でも大丈夫です。




